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Giuseppe Pedrazzini  「ジュセッペ・ペドラッツィーニ」(1879〜1957)は、クレモナで生まれ、木工職人として働いていましたが、24歳の時にミラノで暮らす叔父の所へ行き、弦楽器製作に興味を持ちはじめます。そして、当時ミラノで活躍していた「ロメオ・アントニアッツィ」を訪ね、彼からアドヴァイスをもらいながら自分で弦楽器を製作しました。もともと木工職人だった「ペドラッツィーニ」は、短期間で弦楽器の製作方法を覚え、すぐに素晴らしい楽器を製作したため、周りからも高い評価を受け、1906年には自分の工房を立ち上げました。そして、当時「アントニアッツィ」と共に働いていたミラノの巨匠「レアンドロ・ビジャッキ」にも一目置かれ、外注で「ビジャッキ」の仕事も請け負うようになったのです。


 しかし1914年に第一次世界大戦が勃発したため、「ペドラッツィーニ」は、飛行機を製造する工場で木工の仕事をすることになりました。この工場では、「ビジャッキ」の弟子だった「ジュゼッペ・オルナッティ」も働いていました。おそらく彼らはここで、弦楽器製作の話をするなどの交流を持ち、仕事の合間には、弦楽器を製作していたと考えられます。実際、戦時中に「ペドラッツィーニ」が製作した楽器の存在が確認されております。



 さらに、「ペドラッツィーニ」は、「ビジャッキ」と同様、ビジネスも上手かったようで、ディーラーとしてイタリアの古い楽器の売買も行っておりました。このことは、自身が製作した楽器を数多く、様々な国のディーラーへ販売することにも繋がったと考えられます。


Giuseppe Pedrazzini
 そして、1937年にはクレモナで行われた弦楽器製作コンクールで、カルテッドで製作した作品が賞を獲得したことで、「ペドラッツィーニ」は国際的にさらに多くの注文を受けるようになって行きます。特にロンドンの楽器商、「ブシー&ホークス」からの注文が多く、大量に作品を卸売りしていたため、数多くの楽器を製作する必要がありました。そこで彼は、甥の「ナターレ・ノベリ」や「ピエーロ・パラヴィッツィーニ」を雇い、彼らと共同製作をする様になります。
 この時期の作品は、初期の「ペドラッツィーニ」自身によって製作された作品や、「ガリンベルティ」との共同製作の作品と比べると、作品の出来栄えにムラがあるため、良い作品をしっかりと選別することが重要です。
 それでも、「ペドラッツィーニ」は数多くの素晴らしい作品を製作し、明るく綺麗な正統派の素晴らしい音を持っていたため、後に、ミラノを代表する素晴らしい弦楽器製作家として、その名を残したのです。



 (余談になりますが、私の経験上、演奏家が“モダンイタリー”の楽器を選ぶ際、「ファニオラ」の音が好みでない方の7割以上の方が、「ペドラッツィーニ」の音を好む傾向にあるようです。)



 また、「ペドラッツィーニ」の作品には、鑑定の見地からも独特な“スメル”があり、特に彼独自の“イエローゴールド”の地色は、「ペドラッツィーニ」の作品であることが一目で分かるほどの強い個性を持っており、容易に判別することが出来ます。
なお、ラベルは、製作時期等によって5つのラベルを使い分けています。




 今回ご紹介する1925年製の「ペドラッツィーニ」の作品は、ストラディヴァリの基本形を少し変化させ、アーチを極めて低くした「ペドラッツィーニ」独自のスタイルで、見事な完成度を誇る大変素晴らしい作品です。 そのバランスのとれたサイズ感も完璧で、地色には「ペドラッツィーニ」独自の“イエローゴールド”を、ニスは“オレンジゴールド”で、しっとりと柔らかく輝きがあり、状態は割れ傷一つないミントコンディションで、まさに「ペドラッツィーニ」が脂の乗った一番良い時期に製作した黄金期の作品となります。













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参考文献
「Universal Dictionary of violin & bow makers」  著 William Henle
「Liuteria Itariana」  著 Eric Blot
「L’Archet」  著 Bernard Millant, Jean Francois Raffin