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アンニバル・ファニオラ
 アンニバル・ファニオラ(1866〜1939)は、トリノから50キロほど離れた牧草地帯のモンティリオという町の農家に生まれました。しかしこの町はヴァイオリン製作に携わる者がいなかったため、はじめはアマチュアのギター製作者からギター製作の手ほどきを受けます。この頃のファニオラがどのような環境でギターの製作をしていたのかは殆ど記録が残っていないのですが、彼が製作した「カルロ・ガダニーニ」の忠実なコピー作品は、完璧な複製技術を持っていました。そのためファニオラが作品をトリノの楽器商へ持って行くと、見事に本物の楽器と間違われたのです。そしてそれがファニオラの製作した複製の楽器だと分かると、ファニオラの才能はすぐにトリノで高く評価されて行ったのです。


 その後、27歳の時に彼はヴァイオリン製作を学ぶためにトリノへ引っ越します。そしてトリノに工房を構える「ロマーノ・マレンゴ・リナルディ」の下で修行に励みました。そこで彼は、同じトリノの巨匠「J.B.ガダニーニ」「フランチェスコ・プレッセンダ」「アントニオ・ロッカ」の素晴らしい作品に出逢い、それらの忠実なコピー楽器を製作する事で大きな存在感を示して行く事になるのです。そして、1906年のジェノバとミラノの博覧会では賞を獲得し、自身の大きな工房を構えるまでになります。1911年にトリノで行われた博覧会では、ヴァイオリン2丁、ヴィオラ1丁、チェロ1丁のカルテッド作品が金メダルを受賞すると、ファニオラの名は瞬く間に世界中に広まって行きました。


 そして、イギリスの楽器商人アルフレッド・ヒルが、「ファニオラは近い将来、必ず大物になる」と非常に高く評価する事で、ファニオラは世界中から数多くの注文を受ける事になっていくのです。まさに黄金期を迎えたファニオラは順風満帆で素晴らしい作品を残して行くのですが、その一方で、複数の弟子を雇い入れ、量産体制を整えて行きます。第一次戦後のファニオラの作品が非常に多いのはこのためです。それにより1920年以降の楽器は、弟子達による作業分担が行われ、ファニオラ自身による作品と、弟子が荒削りを担当してファニオラが仕上げた作品、すべて弟子による作品等、作品により出来不出来があり、まさに玉石混合の時期とも言えます。それでもこの時期はファニオラがもっとも活躍した黄金期であり、数多くの安定した素晴らしい作品が残っている事も周知の事実なのです。つまり、この時期のファニオラは自身の製作した出来の良い作品をしっかりと選ぶ事がとても大切です。



 今回ご紹介する1911年製の作品はロッカコピーの作品で、トリノの博覧会で金賞を獲得した年に製作した、もっとも情熱に溢れていた頃の作品と言えるでしょう。その特徴は、アーチが低めでニスの仕上げがアンティーク仕上げとなっており、細工の一つ一つが高い技術でとても丁寧に仕上げられている素晴らしい作品です。3モデルの中でも、もっとも深みのある低音と輝きのある強い高音が魅力です。

 1924年製の作品はプレセンダコピーの作品で、ファニオラの黄金期真っただ中の非常に安定感のある見事な細工で仕上げており、アーチは低めでニスも柔らかく、まさに黄金期のファニオラらしい作品の一つです。3モデルの中でも、もっともしなやかで明瞭な美しい音色を持っております。

 1927年製の作品はガダニーニコピーの作品で、幅広で少しアーチがあり、輝きのある地色と厚みのある上質なニスで仕上げられております。3モデルの中でも、もっともボリュームがあり、力強さと明るさとファニオラ独自の柔らかい音色を両立させています。


1924
model < Pressenda >
1911
model < Rocca >
1928
model < Guadagnini >

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参考文献
「Universal Dictionary of violin & bow makers」  著 William Henle
「Liuteria Itariana」  著 Eric Blot
「L’Archet」  著 Bernard Millant, Jean Francois Raffin