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Ferdinando Garimberti
 「フェルディナンド・ガリンベルティ」(1894〜1982)は、イタリアのパルマで生まれ、1902年にミラノに移ります。 彼の父親は鍛冶屋だったため、「ガリンベルティ」も最初は鍛冶屋の仕事をしていたのですが、その後、結婚してからは夫婦で旅館を経営しました。「ガリンベルティ」は、アマチュア演奏家としてチェロを弾いていた事もあってか、その後、その旅館の常連客だった弦楽器製作家の「ロメオ・アントニアッツィ」と親しくなり、やがて彼は、弦楽器製作家を目指して「ロメオ・アントニアッツィ」の弟子になったのです。

元々鍛冶屋の仕事をしていた「ガリンベルティ」は、木工加工の刃物使いには慣れていたため、メキメキとその才能を発揮し、その後は「ロメオ」の兄「リカルド・アントニアッツィ」の弟子となり、さらに修行に励みます。
そしてその才能を、当時ミラノに大楽器商を築き上げた「レアンドロ・ビジャッキ」に見込まれ、その後「ビジャッキ」工房で働く事になるのですが、すぐに第一次世界大戦が勃発し、徴兵されトリノへ行きました。





 戦後「ガリンベルティ」は、トリノで違う仕事をしていましたが、数年後「ビジャッキ」から連絡があり、再びミラノに戻り「ビジャッキ」工房で働きはじめます。その工房で彼の指導役になったのは「ジュゼッペ・ペドラッツィーニ」でした。
「ペドラッツィーニ」の指導のもと「ガリンベルティ」は、楽器製作だけでなく、修理修復の仕事も短期間で覚え、その才能を開花させていきます。

しかし、職人肌で頑固な性格の「ガリンベルティ」は、ビジャッキ工房のためにスクロールなど、楽器の一部分だけを製作する事を嫌い、またアンティークフィニッシュのコピー楽器などの製作もあまり好きではなかったようで、商売や経営能力に優れていた「ビジャッキ」とは性格的にも相性が悪く、当時の有名な演奏家達の薦めもあり、1920年代前半には自分の工房を作り独立したのです。
(後に発見された「ガリンベルティ」自身の手紙に、自分を育ててくれた師匠は「ビジャッキ」ではなく、「アントニアッツィ」兄弟と「ペドラッツィーニ」だ。と書かれています)



裏板には上質な一枚板の素晴らしい木材を使用し、楽器の型やサイズ、アーチ、細工、そしてとろけるようなしっとりとした美しいフルバーニッシュのニスなど、すべてにおいて完璧。



 そして1920年代後半からは、それまでの行き過ぎた個性により、認められなくなっていた19世紀のミラノの作品を、クレモナの王道スタイルに戻すべく、銘器の研究をしながら素晴らしい楽器を製作して彼の黄金期を迎えます。
その作品は、主に「アマティ」と「ストラディヴァリ」にインスパイアされたスタイルで、均整のとれた美しいフォルムや、バランスの良いミディアムアーチ、キレのあるエレガントなf字孔、そしてパフリングや縁周りの細工などは完璧と言える見事な作品でした。

1927年にローマで行われた弦楽器製作コンクールで受賞したことを皮切りに、1931年には再びローマのコンクールで入賞し、さらに1937年に行われたクレモナのコンクールでは、チェロで1位、ヴァイオリンで2位、ビオラで2位と、3部門で賞を獲得します。
その後も1949年にクレモナのコンクールで賞を獲得するなどし、「ガリンベルティ」は、ミラノを代表する弦楽器製作家となっていったのです。





Ferdinando Garimberti


 「ガリンベルティ」は、尊敬する弦楽器製作家として「ジュゼッペ・オルナッティ」の名前をあげていますが、この二人の作品は非常に似ていて、まさに彼らは、ミラノの弦楽器製作に於ける正統派のスタイルを確立した人物と言えるでしょう。
後にこの二人は、現在クレモナにある国際ヴァイオリン製作学校の教師として、多くの若者達に指導しました。その生徒の一人が「ジオ・バッタ・モラッシ」です。





 今回ご紹介する1932年製の「ガリンベルティ」の作品は、まさに彼の黄金期真っ只中の見事な作品で、必要以上の自己のアピールがなく、奇をてらう事もなく、まさに教科書通りに、ただただ普通のことを、すべての箇所で完璧に行って形にしたような作品です。この普通の事を普通にしっかりと行い、無駄に必要のない事を行わない事こそが、弦楽器製作ではもっとも難しい事であり、彼の作品が、現在もっとも多くの弦楽器製作家にリスペクトされている所以がここにあるのです。














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参考文献
「Universal Dictionary of violin & bow makers」  著 William Henle
「Liuteria Itariana」  著 Eric Blot
「L’Archet」  著 Bernard Millant, Jean Francois Raffin