Carlo Bisiach 「カルロ・ビジャッキ」(1892〜1968)は、20世紀の弦楽器製作におけるミラノの繁栄に最も貢献した製作家「レアンドロ・ビジャッキ」の2番目の息子としてミラノに生まれ、幼少の頃より父「レアンドロ」から弦楽器製作を学びます。4人の兄弟は皆、弦楽器製作だけでなく、修理、修復、調整、販売、鑑定など、多岐にわたり父や兄弟から学び、父の会社とも深く関わっていたのですが、長男の「アンドレア・ビジャッキ」(1890〜1967)はフランスやアメリカを行き来した後に父の元を離れ、主に修理の仕事をしながら鑑定家の道を目指します。また、三男の「ジャコモ・ビジャッキ」(1900〜1995)と、末子の「レアンドロJr.・ビジャッキ」(1904〜1982)は、共に協力して父の楽器商としての事業を引き継ぎます。

そんな中、兄弟の中でもとりわけ職人気質だった「カルロ・ビジャッキ」は、1925年にフィレンツェに移り、独立して自身の工房を構え、楽器の売買などの商業的な活動は殆ど行わず、弦楽器製作に集中したのです。
研究熱心だった「カルロ・ビジャッキ」は、当時フランスで弓製作の分野で最も活躍していた「ユージン・サルトリー」の下、弓製作を通しての刃物使いやその細工などの研修と研鑽に力を注いだ時期もあるほどでした。
その結果「カルロ・ビジャッキ」は、1937年と1949年にクレモナをはじめとする様々な展示会で金賞を獲得するなど、非常に高い評価を得たのです




その作品の特徴は、主に巨匠「アントニオ・ストラディヴァリ」の型を模範としておりますが、「ストラディヴァリ」の作品が持つ美しく力強い表情の中に、「ニコラ・アマティー」の持つ繊細な上質感を併せ持つような緻密で端正な作品が多く、「カルロ・ビジャッキ」独自の“クレモナ・オールド”に対する理解と尊敬の念を感じることができます。


Carlo Bisiach 1925
また、彼の作品の特徴にもなっている裏板と横板の木材には、独特なスラブカットやハーフスラブカットで製作された作品が多く、ニスの下処理にも独自の加工が施されており、良くも悪くも一目見た瞬間に「カルロ・ビジャッキ」の作品とわかるほどの強い個性を持っております。
音の見地からみると、この下地の処理と木材の木取りにより、モダン楽器とは思えない「オールド楽器」のようなダークさや奥深さを持ち合わせてはいるものの、同じ「レアンドロ・ビジャッキ」の弟子であった「ジュゼッペ・オルナッティ」や「フェルディナンド・ガリンベルティ」のような正統派としての王道の製作家とはまた一味違った個性派に分類されてしまう部分があるかもしれません。

しかしながら、「カルロ・ビジャッキ」の作品は、現在でも非常に人気が高く、彼独自の繊細な細部の作りや、独特な色合いで奥行きのあるレッド・ヴァーニッシュの仕上げなどが作品の持つ魅力に大きく貢献しております。




なお、「ビジャッキ・ファミリー」を語る上で欠かせない人物に、「イジーノ・セデルチ」という弦楽器製作家がいます。「セデルチ」は、「レアンドロ・ビジャッキ」と非常に深い関係にあり、「ビジャッキ工房」のために働いていましたが、「レアンドロ」の息子たち(特にジャコモとレアンドロJr.)が若い頃には、弦楽器の製作を教えるなどし、また彼らがそれぞれの道に進んだ後にも彼らのために仕事をしました。
それは「カルロ・ビジャッキ」においても例外ではなく、父「レアンドロ」の工房から独立してフィレツェに移った後も、「カルロ」は「セデルチ」との協力関係を続けていたようです。つまり、「ビジャッキ・ファミリー」の製作した楽器の多くには、「セデルチ」の関わりがあり、作品にもよりますが、特に「ジャコモ・アンド・レアンドJr.・ビジャッキ」の楽器は、ニス以外全てを「セデルチ」が製作した楽器も少なくないということを念頭においておいたほうがいいでしょう。




今回ご紹介するこの1925年製の「カルロ・ビジャッキ」の作品は、彼がフィレンツェに移ったばかり頃の作品で、「ストラディヴァリ」コピーというよりも「アマティ」を模範にした作品の中に、上手く「ストラディヴァリ」の特徴も取り入れたようなバランスの良い楽器で、裏板と横板の木材にはハーフスラブカットを使用し、下地の処理は彼独自のものを使用しております。その端正で美しい楽器のフォルムはサイズ感もよく、細工やアーチ、上質なレッド・ヴァーニッシュ、音質、音色、それらすべてにおいて「カルロ・ビジャッキ」の特徴を強く感じることのできる典型的な素晴らしい作品となっております。

なお、多くの文献に「カルロ・ビジャッキ」は、1926年にフィレンツェに移ったと書かれておりますが、おそらく彼が役所に移転の届けを出し、その事が残っている年が1926年であり、実際には1925年にすでにフェレンツェに移っていたことをこの楽器が証明しております。










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参考文献
「Universal Dictionary of violin & bow makers」  著 William Henle
「Liuteria Itariana」  著 Eric Blot