「フランソワ・ニコラ・ヴォアラン」(1833〜1885)は、パリの名門“ヴィヨーム工房”最後の大物製作家として君臨し、「トゥルテ」「ペカット」「シモン」などを中心とするオールド・ボウの時代から、「ラミー」「サルトリー」「ウーシャ」などを中心とするモダン・ボウの時代へと移り変わる時期に極めて重要な役割を果たした、フランスの楽弓製作史上、欠かすことの出来ない重要な人物です。
その作品は、当時の演奏家達から「モダン・トルテ」と呼ばれ、それまで主流だった「ペカット」の影響によるスクエア・スタイルの弓製作を、「トルテ」の初期の作品に倣ったラウンド・スタイルへと変革させていくものでした。
これにより、当時の演奏家の間でも、音量より音質重視の少い重量の軽い弓が流行しました。弟子の「ラミー」や「トーマッサン」などは、このスタイルを完全に継承しています。

本作品は、1884年に製作された「ヴォワラン」の典型的なスタイルを持つエレガントなラウンドタイプの作品で、独自の柔らかく美しい音色を持っております。 また、フェルールには “RECUERDO P.DE SARASATE” と刻印されております。



       





「ヴォワラン」の解説 Noteworthy Bow Sales